長崎無線を想うとき    user.png 元白雲寮の住人
time.png 2022/11/07(Mon) 19:16 No.417

いろいろな機会に長崎無線のことが脳裏に浮かびます。そのひとつが、読んでいる本や観ている映画のなかに無線通信に関することが出てきたときです。

最近の本でいえば1959年生まれの作家・佐伯一麦(さえきかずみ)さんのエッセイ集『Nさんの机で~ものをめぐる文学的自叙伝』(田畑書店、2022年)。この本の「電鍵」と題した文章のなかで彼は、「今でも私は、小説の原稿につまったときや、自分の言葉がどれだけ他人に届くのだろう、という思いにとらわれたとき、いつも傍らに置いている電鍵に手をのばす。そして、モールス信号を戯れに打ちながら、無線少年だったかつての自分を思い出す」と書いています。
また「赤色エレジー」でのデビューから今年9月で50周年を迎えた1948年生まれのフォークシンガー・あがた森魚(もりお)さんは、今村守之さんとの共著『愛は愛とて何になる』(小学館、2022年)のなかで、運輸省の海運局に勤めていた1909年生まれの自分の父親について、「当時の逓信高等学校に行っていたんだけれど。今で言えば高専みたいなところだろうか」と語っています。ちなみに運輸省の前身は逓信省や鉄道省などが統合された運輸通信省であり、彼の言っている「逓信高等学校」とは、おそらく「逓信官吏練習所(のちの高等逓信講習所)」のことだと思われます。

そして今年観た映画では『パラサイト~半地下の家族』(韓国、2019年)。この作品では、豪邸に忍び込んで見つかり地下の隠し部屋に閉じ込められた男性が、庭に通じている照明のスイッチを押して、ハングルによるモールス信号で助けを求めるという場面が出てきます。
また『めまい』(韓国、2019年)という映画では、主人公であるひとり暮らしの女性のスマートフォンの着信音が、日ごろからうとましく思っている母親からの電話に対して、モールス符号の「SOS」が鳴るという設定になっていました。なおこの場面が出てくるのは映画の後半に一度だけ、しかもそれと分かる説明は何もないので、そのことに気づく楽しみが味わえるのはモールス信号を知っている人だけなのかもしれません。

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